ドクターカー導入30年 船橋市

救急車に医師が同乗するドクターカーを船橋市が導入して30年になる。市立医療センターが開業した1983年当時、病院に到着するまでに亡くなってしまう人が多かった。医師が現場で初期治療をすることで救命率を上げようと1993年に全国に先駆けて24時間365日体制での運用が始まった。

画像=ドクターカーで出動する医師と隊員ら

消防局の救急ステーション(金杉1)に1台を配備し、乗車は同センターの医師と船橋市医師会所属の医師が交代で担当している。出動基準は重度の傷病者がいる場合や多数の負傷者がいて治療優先順を決めなければならない場合など。管轄の救急隊と同時に出動する。 

同乗する医師の役割変化
高齢化などを背景に全国的に救急出動件数はこの30年で3倍に増えた。乗じてドクターカー出動も急増している。救急救命士の普及や処置の範囲が拡大されたことで、運用開始当初と比べ同乗する医師の役割も変わってきた。救急課の小林修消防司令(56)は「各病院の特徴を理解した上での搬送先の指示や、やるべき治療に向けて現場から事前に伝える」など、現場での処置から、全体を指揮する役割へと重点が移っているという。

ドクターカーの有用性が認められる一方で、全国の病院で慢性的な医師不足などの課題がある。厚労省が昨年発表した調査報告書によるとドクターカーを保有している全国の施設のうち、年間1000回以上出動要請受諾件数があった施設は10施設にとどまる。さらに24時間体制で運用している施設は全体の2割という。

医師の働き方改革で今後も人手不足が加速する懸念もあるなか、「事後検証、運用の見直しを行い時代のニーズにあった運用を続けていきたい」と小林消防司令は話している。