「人」ベトナム女子サッカーの発展に尽力する井尻明さん
先月20日に幕を閉じたサッカー女子ワールドカップ(W杯)で初出場を果たしたベトナム代表。「女子サッカー統括」という役割でその快挙へと導いた立役者だ。グループステージ3敗の結果に「世界(アジア)との差がまた開いてしまったなというのが一番の感想。しかしW杯に出場したことで少女がサッカーに興味を抱き、ボールを蹴り始めてくれる機会になるかも」と今後の発展に期待する。
国内で女子チームの指導経験があり、アジア各国にサッカーの魅力を伝え普及させたいと、日本サッカー協会(JFA)の海外派遣指導者として19年にベトナムへ渡った。現地の女子選手たちは持久力やスピードなどポテンシャルの高さを伺わせる半面、学校などで球技をする環境が乏しく、ボールの扱いが不器用だった。そこで、体力作りのメニューから常にボールに触れテクニックの向上に重点を置いた。
市船橋高サッカー部の出身で、インターハイで2度の優勝。大学を経て京都パープルサンガ(現・京都サンガ)でDFとしてプレーしたが、20代半ばで早々に現役を退き指導者の道に進んだ。「布先生の元で日本一厳しいと言われる市船のトレーニングを3年間やり続けた。その経験が今の仕事の原点」と話す。一方で、全国制覇し高校選抜に選ばれるなどしたことで、気持ちが浮ついた。プレイヤーとして中途半端にキャリアを終えたことを後悔している。選手として5年後10年後を見据えることの大切さを伝えながら、若い世代の指導にあたっている。「私もサッカーに助けられ、多くの人とつながった。いつまでもサッカーを好きでいてほしい」