環境負荷低減の意識を 新たな価値「アップサイクル」
素材を再利用する「リサイクル」に対し、新たな価値ある製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」と呼ばれる手法が注目されている。鎌ケ谷市で昨年11月、不用になった衣類からスマートフォンのストラップを作るワークショップが開催された。アップサイクル品の販売会社WAcKA(八千代市)を経営する梶原誠さん(47)を講師に参加者たちはTシャツをハサミで切り、紐状にしたものを三つ編みにしていった。指先に力を入れてねじりながら編み込む作業に、「均等に力を加えるのが難しい」と苦戦。梶原さんは「衣料品ひとつ作るだけでも、こんなに大変だと感じてほしい」と声をかけていた。
画像=編み方を指導する梶原さん㊧
大阪府出身の梶原さんは大学卒業後にアパレル企業に就職。当時は「安くたくさん売る」ことが善だと疑わなかった。だが赴任先のバングラディシュの工場でそれが誤りだと思い知らされた。そこでは地球温暖化による海面上昇で家を失った大勢の親子が劣悪な環境で働いていた。
大量生産、大量消費のファッション産業が環境に大きな負荷をかけていることが指摘されている。国内の衣類は年間40億着と供給過多で約3割が新品のまま廃棄されている。「安く売るために賃金も安くなる。後進国の問題は、我々先進国が生み出している」と梶原さん。そうした問題を消費者に伝えるのが自分の使命と、17年に同社を起業。県内を中心にワークショップなどを通じて業界の現状を訴えている。「アップサイクルすることがゴールではなく、消費者の意識、行動を変えていけるように地道な活動をしていきたい」と梶原さんは話す。