消えゆく地域の伝統芸能

長年各地で続いてきた民俗芸能が厳しい局面にある。後継者不足や担い手の高齢化が主な理由だが、コロナ禍での中断をきっかけに、そのまま休廃止となっているケースも少なくない。船橋、鎌ケ谷エリアでも、ここ数年で複数の行事が廃止になっている。

画像=天道念仏の復活を目指す世話人ら

その一つが「天道念仏」だ。海神では毎年3月に行われてきたが、19年を最後に休止状態になっている。冬に弱まった太陽の力を復活させ、当年の五穀豊穣を願う行事で、かつて関東一円で盛んだったとされる。市の調査資料によると船橋市内でも20カ所以上で行われていたという。近年では海神のほかに中野木でも行われていたが、しばらく休止しており、今年1月の集まりで廃止を決めた。

ニホンオオカミを神の使いとして祭る埼玉県秩父市の三峯神社を参詣する「三峯講」。盗賊除けや火伏せにご利益があるとされ、江戸時代に全国各地に講ができた。最近まで北初富にも講があったが、21年1月に歴史に幕を閉じた。

船橋市文化課は「把握できていなものもあるが、減ってきているのは事実。地域で担っている方の高齢化や若い方がコミュニティに入って来ないことに対し、うまく盛り上げる手段がない。市としては、できる限り取材をして記録を残していくことが最大限できること」と話す。

天道念仏の再開 模索
海神の天道念仏は念仏堂に隣接する墓地を持つ地元民らが受け継いできた。その念仏堂と墓地の管理も担う世話人らが行事の再開を模索している。

海神の天道念仏はボンテンと呼ばれる祭壇の周りで男性は鉦や太鼓をたたき、女性が扇を手に周りを踊る。かつては出店もあり、にぎやかな催しだった。戦後に一旦途絶えたものを、1981年に復活させたという。

世話人を30年務める矢作茂さん(80)は休止している現状について「今まで行事を守ってきた上の世代の先輩たちから見ると、何をやってるんだということになる。なんとか保存していかなくちゃいけない」と使命感を口にする。だが、以前6人いた世話人の数も3人に減り、開催日までの材料の調達や祭壇の組み立てなどの作業が困難となっている。また、主役となる踊り手の多くは80代で、後継者も見つかっていない。

世話人代表の金子正文さん(73)は、「昔からの規約もあるが数年おきの開催や室内で行うなど、形を変えながらでもやっていきたい。無くなるのは寂しい」と、住民で話し合いながらがら再開を目指したいという。