学生中心で作った人工衛星 「KASHIWA」来春打ち上げ

千葉工大の学生が作った超小型衛星が来春、宇宙に打ち上げられる。衛星は1辺10㌢、重さ約1㌔のキューブサット。既存の基本設計を基に製作し、独自のミッションを載せた。衛星の組立から、打ち上げのための各種機関への申請、宇宙空間での運用まで学生が担っている。

画像=完成した衛星を紹介する学生ら

日本は宇宙分野の国際競争で遅れを取っている。同大惑星探査研究センターによると、高度な設計や運用を支える技術者が圧倒的に不足しているのが現状という。これまで大学での衛星製作は3~5年をかけ、研究室総出で行ってきた。学生が携わるのは過程の一部で、全体を学ぶことができなかった。そこで同大では21年から「高度技術者育成プログラム」を始め、宇宙分野で活躍する人材育成に力を入れている。

今回、同大学生が製作した3機うちの1機が打ち上げに必要な全ての審査を通過。4年生13人が手掛けた人工衛星で「KASHIWA」と名付けた。

この衛星のミッションの一つはカメラでの撮影。太平洋ゴミベルトと呼ばれる大量のゴミが集まっている位置の把握や、都市部の夜間の光量測定のための撮影など、環境問題解決の糸口にしたいという。他に一般アマチュア無線家へのメッセージを送受信したり、地磁気をとらえ音に変換したりする。

カメラミッション担当の工学部先端材料工学科の高橋悦子さん(24)は「ここに所属していなければ、宇宙に関わるプロジェクトに携わることは無かったかもしれない。貴重な体験ができた」と話す。

電力供給システムの設計などを担当した電気電子工学科の貞末洋佑さん(22)は「電源は衛星が動くための心臓部分。とにかく動いてくれと願っている」と思いを語った。機械工学科の関口智礼さん(22)は、「このプロジェクトを通じて、関係機関との調整など社会人のような経験を積むことができた。運用でもしっかり動く衛星を作って未来で人類に貢献できるような人材になっていきたい」と話した。

衛星はすでに宇宙航空研究開発機構(JAXA)に引き渡しが完了しており、来春、スペースX社の「ファルコン9」で打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)へ届く。その後、約90分で地球を一周しながら観測するという。

現在、他の2機の審査も進めており、順次打ち上げを目指す。同育成プログラムでは、30年までに最大9機の衛星打ち上げを計画している。