古布の再利用 裂き織り好評 障がい者施設「空と海」
神保町の障がい者福祉施設「空と海」では不要となった着物などを裂いて横糸代わりに再利用して織り直す「裂き織り」製品を作っている。
画像=織機で作業するベテランの利用者
手織り1点物の魅力 海外からの注文も
寄付された着物や生地を裂いて横糸に、縦糸には施設の利用者が藍染めや柿渋染めをした糸を使っている。一つ一つが手作業のため、丈夫で味わいのある1点もの。ベッドスローやクッションとして国内企業だけでなく海外の一流ホテルからの注文があるなど高い評価を得ている。
同施設が「商品としてデパートでも売れる作品を創ろう」と機織りをを始めたのが02年。手織物に詳しいボランティアスタッフの指導を受けながら、裂き織りは始まった。
40代の男性利用者は、機織り歴20年のベテラン。計算が得意で反物のサイズに必要な糸の本数を織機に張るのが健常者と比べても早いという。20代の女性利用者が作る反物は、均一でない仕上がりだが、他にはない味わいある作品に仕上がっている。
奥野瑠一施設長(34)は「利用者それぞれの得意を生かせる作業を一つに絞らず割り当てている。糸とサイズなどを指定する以外は、利用者さんに自由に創作してもらっている」という。納期にゆとりを持たせてくれるなど発注企業も理解があり、利用者もそれぞれのペースで作業できる。
奥野さんは「工賃を稼いで自立というのもいいが、自分の好きなことに没頭できる居場所が必要だと思う。その上で、利用者たちは大手のホテルなどに納品できる品質のものを作れるというプライドを持ってくれている」と話す。