不幸な命を増やさない 猫の保護団体が手術車両導入

飼い主のいない猫の保護などをしている市民団体「猫の森」が、猫の去勢・避妊手術を出先で行うことができる移動手術車を先月、導入した。

画像=完成した車両の説明をする北村さん

野良猫の繁殖を防ぐために捕獲(Trap)して不妊去勢手術(Neuter)をし、元の場所に戻す(Return)「TNR」という取り組みがある。「1匹ずつ対応するよりもまとまった数を一度に手術できれば不幸な命を増やさないことにつながる」と会代表の北村由紀子さん(49)は狙いを話す。また、近年問題となっている多頭飼育。保護しようにも数が多い場合はすべてを連れて帰ることはできない。動物病院に運んでも不妊手術できる数も限られるため、何度も往復する。受け入れ環境を整え改めて迎えに行く頃には、新しい命が産まれているケースも珍しくないという。

「保護した場所で手術ができたら」。そんな思いを抱えていた時、他県で出張型の手術車が運用されていることを耳にした。

野良猫の不妊、去勢に尽力する獣医師の協力を得ながら手術車の導入を検討。クラウドファンディングで支援を募り、638万円の提供を受けた。

完成した手術車はワゴン車を改造したもので、手術に必要な機材を完備した。移動先で水と電気を確保できれば、長時間稼働できる。予備電源や最小限の水は搭載しており、災害時には診療室として使用できるという。

毎週金曜に獣医師同伴で依頼場所へ向かう。手術費はオス5千円、メスが7千円(耳カット含む)。1時間で3匹ほどの処置が可能で、依頼は地域猫、飼い猫を問わず10匹以上から。

多頭飼育など飼い主が費用を負担できない時は条件付きで団体が費用を立て替える場合もある。北村さんは「劣悪な環境で亡くなった命をたくさん見てきた。早急に対応していかなげれば繁殖は止められない」と早期の処置の必要性を訴えている。