「街のアトリエ」漆の色艶に魅せられて 藤澤保子さん

高根台在住の藤澤保子さん(78)は漆器を作り続けて55年になる。漆の調合から塗り、蒔絵や螺鈿まで一連の工程をすべて一人で行っている。

画像=雲をイメージしてたデザインした飾箱

「いろいろとやってきて、漆の色艶は他にない。漆が出す色や技法一つ取ってもさまざまで奥が深い」と魅力を語る。漆工芸は一つひとつの工程に手間と時間がかかる。作品によっては塗りだけで70工程。完成までに10年以上かかる作品もあるという。

漆との出合いは12歳のころ。母親の漆の着物が放つ、「何とも言えない美しさ」に魅了された。東京芸術大でデザインを学び、同大学院で漆芸を専攻した。

これまでに作った作品は200点を超える。18年にインターネット上で公開したところ、実物を見たいと多数の反響があった。

蒔絵のパターンなど既存のデザインは使わないのがこだわり。常にオリジナルのものを生み出したいという。

漆器の国内での歴史は長いが、生活スタイルの変化から日常で使う人は減っている。材料費や手間暇がかかるため安価ではなく、漆のお椀は今や贅沢品だ。「お土産として購入する外国人の方が漆のことをよく知っているのが残念」と話す。それでも「日本文化の粋を残していかなければ」と、本の出版や大学や専門学校で授業を行ってきた。

最近は漆の技術を使ったオブジェも作成している。「作者の年齢がわからないような作品を。いいもの作り続けたい」