街の工務店の挑戦 「木のまちプロジェクト」
「脱炭素社会」へ向け木造建築の高層化に注目が集まっている。鎌ケ谷市の工務店、東洋ハウジングは鎌ケ谷市役所向かいの同社の土地に、木造15階建ての自社ビルなどを建設する「東洋木のまちプロジェクト」を進めている。
画像=免震構造について説明する西峰社長
建設中のビルは耐震強化を目的とする円形のデザインで、床や壁、エレベーターシャフトなども木材を使った「純木造」(1階は鉄筋コンクリート造)。同社によると、今春着工した建物としては全国で最高層という。複数のテナントを迎え、23年11月の街開きを目指している。
西峰秀一社長(52)は「地球環境の整備に向けた街の工務店のチャレンジ。このプロジェクトで得た技術はどんどん公開していきたい。我々だけで貢献はできない。気候変動は全国、世界をあげて取り組むべき課題だ」と熱意を語る。
木造の高層化に注目
木造の高層化を可能にするのはCLT(直交集成板)という繊維方向が直交するように積層接着したパネルを使った工法の普及だ。これまでコンクリートや鉄骨でしか支えることができなかった荷重を支えることができ耐火性もある。鉄骨コンクリートによる従来の建設に比べ、CO2排出量が大幅に削減できるという。CLT工法の国内普及や国の補助などもあり、複数の住宅メーカーが木造の高層建設に乗り出している。
西峰社長は「本当はあらゆる建築を木造化するべきだと思っているが、まだまだコスト面が問題。国内のCLTメーカーは十数社で、その中で大手が2社。ほぼ独占状態で価格競争も起こらない。黒船来航じゃないけど、外からの参入がスパイスとして必要」と話す。
木造建築を推進する狙いのもう1つに、国内の人工林の再生がある。若い木がCO2を吸収する一方で、樹齢を重ねた木はCO2を放出する。再造林する必要があり、廃れた地域林業の活性化にも繋がる。
同プロジェクトの総建設費は約21億円。「自分の人生での置き土産じゃないけど、最後に遺していきたい物」と西峰社長は話している。