「人」日本人集団ゲノムの新説「三重構造モデル」の研究に携わる船橋市の学芸員 畑山智史さん

先月、日本人の起源について主流だった仮説「二重構造モデル」を覆す新説が大きく報道された。

古い生物の遺体から全遺伝情報を抽出し、比較解析する手法を用い、現代の日本人集団のゲノムが縄文人、東北アジア、東アジアの3つの祖先集団で構成されている「三重構造モデル」が判明したとする論文で、米科学誌に掲載された。金沢大、ダブリン大などの16人による共同研究グループによるもので、そのうちの1人だ。

船橋市の飛ノ台史跡公園博物館(海神4)の学芸員。中山競馬場周辺の古作貝塚から見つかった約4千年前の女性2体の人骨からDNAを採取し解析した。数年前に海外で報告された「耳の奥はなぜかDNAが豊富」という発見に基づいた手法で研究に当たった。

大阪府で生まれ、5歳で石川県金沢市に転居した。昆虫採集が好きだったが、「男の子あるあるで、恐竜に目覚めた」ことから化石に興味を持ち、やがて市内に多くある貝の化石を集め始めた。岡山理科大では、今回の共同研究チームにも名を連ねる富岡直人教授の薫陶を受けた。

古作、宮本など船橋市には重要な貝塚が多く、かねてより論文を愛読。18年に考古学の専門職として同博物館に着任した。現在は、今月開催予定の船橋の縄文時代をテーマとした展示会の準備に追われているところだ。

「学術的な最新の成果を誰より先に知ることができる」と研究の魅力を語る。「知のリレーの一因になれたことを誇りに思う。次世代につなぐのが学芸員の仕事。資料を保全して、どんどん未来へとつないでいきたい」