「人」東京五輪金メダリスト橋本大輝らを育てた市船橋高の体操指導者 神田眞司さん
日の丸を胸に躍動した市船橋高出身の橋本大輝、谷川航。教え子の活躍を、「なったらいいなと思っていたが、現実にそうなるとは思っていなかった。ぶったまげた」と喜ぶ。同高に赴任して16年。現在は体操部の「総監督」として指導している。
専用体育館の建て替え工事中だった17年、体操部は習志野高で練習していた。帰宅が遅くなるため、自ら車のハンドルを握り部員らを駅まで送迎。その中に、当時1年生だった橋本がいた。「技術は全然ないが体力はある」と素質を見抜き、7カ月にわたって車内で演技の反省点、構成、試合前の心掛けなど体操の考え方をレクチャーした。
監督の大竹秀一さんもかつての教え子で、大竹さんが前任の習志野高で指導した萱和磨(男子団体主将)は孫弟子に当たる。
船橋市生まれ。海神中で体操部に入り、習志野高を卒業後、順天堂大3年時に全日本種目別選手権の床運動で優勝した。定時制高校の保健体育教師として働きながら競技を続け、1987年にはオランダ・ロッテルダムの世界選手権で舞った。翌年のソウル五輪を目指したが、出場は果たせず、29歳で現役を退いた。
指導にあたっては「体操を嫌いになってほしくない。楽しんでもらいたい」と語る。押し付けず、型にはめないのが信条だ。アドバイスはあくまで「選択肢の一つ」として提示することで選手の自主性を促す。マナー面では「だめなときほど笑顔でいるように」。自身も絶えず優しくほほ笑み、その教えの通り、市船橋高の練習風景は常に和やかだ。
「みんなが代表選手になるわけではない。高校で競技を終える子も、大学で気楽にやる子もいる。彼らと金メダルを取る子はイコール」。一人ひとりの若者と向き合いながら、体を操る喜びを伝えている。