松戸徹氏 3期目の抱負

6月20日投開票の船橋市長選挙で3選を果たした松戸徹氏(66)。23日に本紙の取材に応じ、3期目への展望を語った。

●松戸徹(まつどとおる)…1954年11月9日、八千代市生まれ。薬園台高、東京理科大理学部卒。78年に船橋市役所に入所し、市教委、公民館、広報公聴課、市長公室などを経て、2009年に副市長。13年に市長初当選。尊敬する人物は江戸時代中期の米沢藩主、上杉鷹山。

■新型コロナウイルスへの対応について。
昨年2月に対策本部を立ち上げ、医療体制、市民生活、事業者支援の3本柱で対応してきた。
ワクチンは「かかりつけ医」による接種体制にしたが、実際にやってみたら時間がかかり、目標に届かなかった。市民の皆さんに不安と不便をお掛けてしまい本当に申し訳ない。今、集団接種会場を大幅に拡大しており、加速できるのではないか。ただ、従事する人員の確保が難しく、全国の自治体で取り合いになってしまっている。しっかり確保したい。
変異株については、市保健所の検査で特定できる。市民にデータを直接示すことができる体制は、地味だが大きなこと。保健所には市の職員を100人以上、増強している。

■市民意識調査で毎年トップになる「交通渋滞の解消」については。
船橋の動脈のほとんどは国道、県道。県とは協議している。先日、赤羽一嘉国土交通大臣と直接お会いして、船取線(船橋我孫子線)の車線の問題などを伝え、具体的な地点を抽出して予算を付けてもらいたいという話をした。ビッグデータの活用では、県警も入った協議会を立ち上げた。時間はかかるが一歩一歩、歩き続けない限り無理だ。確実に前進させたい。

■公約の医療と健康をテーマとした「メディカルタウン構想」について。湿地帯を含む地区に作ることには反対の声もある。
新しい技術を加味しながら、基盤の段階から配慮して整備していきたい。

■4年前の市長選で訴えた「美術館の新設」について、今回の選挙では公約に掲げなかった理由は。
京成船橋駅南側で民間の再開発の話があったが、計画がうまくいかなかったので、候補地がなくなってしまった。

■コロナ禍で市税収入が落ち込んだ影響は。
08年のリーマンショックの時には市税が戻るのに5年かかった。コロナの影響は読み切れない。リーマンと違うのは、維持できている業種と瀬戸際まで追い込まれている業種に分かれており、非常にばらつきがあること。

■LGBT施策など人権の尊重や、環境施策は。
LGBTについてのパートナーシップ制度は年内に、実効性がある内容をしっかりと考え、対応したい。環境問題は世界的な流れを見ても、コロナ後にメーンのテーマになる。目標の共有を図りたい。いろいろなアプローチがある。海洋プラスチックごみの調査は大学と連携して進めている。

■市は33年度をピークに人口が減るとの推計を公表している。他方、公共施設などの料金値上げには反対の声がある。
人口減が避けられない中、市民が安心して生活できるサービスを続けなければならない。財源をどこから捻出するか。行財政改革で、人を減らすのではなく仕事のスリム化を図りたい。
18年の市民アンケートでは、行政の市民サービスの維持・充実のためには「直接受けている利用者のみの負担を増やすことが望ましい」と「市民全体の負担が増えるのはやむを得ない」という意見の合計が8割だった。声なき声と、どこで折り合いをつけるか。(福祉の経費となる)民生費が10年間で244億円増えており、フリーハンドで予算を使える余地はほとんどない。

■市長選の投票率は2回続けて28%台。市政への関心が薄い市民が多い。
自分の住んでいる街への関心を、良い面も悪い面も持ってもらえれば。子どもたちにとっては生まれ育つ街。
姉妹都市のあるデンマークの集会では、市民対行政ではなくて、市民同士で議論している。そういう風土を時間をかけて育てたい。

■一政治家としての松戸徹とは。
まだ生まれていない人も含めて、市民の幸せを作ることが自治体の長の役割。自分が市長を任せていただいている意味は何だろうと、ずっと考えている。これまで人と人をつなぎ、子どもたちと語り合って施策を具体化してきた。
コロナ以降の社会づくりは、市民の力を信じて、一緒に汗を流すことが一番大事だ。