看護師の有償ボランティア「キャンナスふなばし」半年
在宅生活を支援する「キャンナス」という看護師グループによる有償ボランティア活動が広がっている。病院や訪問看護ステーションから地域に飛び出し、介護や通院などをサポートする。キャンナスは96年に神奈川県藤沢市で始まり、現在は全国130カ所以上の拠点がある。船橋市では薬円台在住の訪問看護師、佐藤亜希さん(43)らがその活動に賛同し、昨年夏に「キャンナスふなばし」を立ち上げた。日・月曜、夜間のみの活動だが、立ち上げから半年で訪問件数が100件を越えた。
画像=「最近、心臓はどうですか」などと声をかけながらていねいに爪を整える佐藤さん
ある日曜、佐藤さんは50代女性とその母親が暮らす船橋市内の自宅へバイクを走らせた。依頼内容は「爪切り」などで、3週間に1度ほど訪問している。
80代の母親は19年に脳梗塞で倒れ右半身にマヒが残る。女性は2年にわたり献身的に介護してきたが「硬くて、爪ではないところを切ってしまいそうで。すごい伸びて曲がっちゃっていた。爪切りだけを頼める人がいなかった。助かっている」と話す。
コロナ禍で親族の協力が得にくい中、「母からはしっかりしろと怒られて。頭も洗わせてくれずもうクタクタ。家族じゃ、無理だった」。そんな時、キャンナスの存在を知った。
「入浴も自分がやるものだと思い込んでいた」が佐藤さんから、訪問の入浴サービスがあるか聞いてみたら、と助言を受け、心が軽くなった。
佐藤さんは「自宅でどう過ごすのか、どこに何を相談して、どのようなサービスが利用できるのか。情報が届いていない現状がある」と話す。
長年、市内医療機関などに勤め、退院後の生活に不安を抱く患者や家族の姿を見てきた。業務外にも、自身にできることはないか。「看護師の言う『大丈夫』には重みがある」と知り合いの医師に背中を押され、活動を始めた。
キャンナスは、できる(CAN)ことをできる範囲で行うナースの意。医療行為は原則行わず、依頼者が日常で行う範囲で家族の代わりに対応する。利用料は支部で異なり、船橋は、1時間千円、30分500円。運営と看護師で折半する。
依頼内容は「受診の付き添い」「整容」「見守り」など。ほか、制度外だが必要とされること。コロナ禍で自宅でのみとりも増え、利用者は「安心を求めている」と佐藤さん。「医療機関や訪問診療、訪問看護や介護、施設、包括、居宅、福祉用具と、市民の方々をつなぐ」役割も担っている。
問合せは℡090・1214・9302、Eメール(canfuna@gmail.com)佐藤さんまで。