戦中語るオルガン 修復
35年前に寄贈を受け、壊れた状態で倉庫に保管されていたリードオルガンの修復作業が完了し、臨時休館中の船橋市郷土資料館(薬円台4)に戻ってきた。
画像=横浜の工房で約1カ月かけて修復されたオルガンを弾く栗原館長
1944(昭和19)年ごろ船橋に疎開してきた子どもたちが学んだ「花輪戦時疎開学園」で使われたもの。26人の女の子たちがこのオルガンを囲んで歌った。寄贈したのは当時、宮本国民学校に勤務し、同学園で音楽指導をしていた女性教師。東京から疎開してきた子どもたちと、船橋の児童、教師らの間を取り持ったという。
オルガンは木製で高さ約103㌢、幅約117㌢。ペダルを踏んで空気を送り「リード」と呼ばれる板を振動させて音を出す。
栗原薫子館長は「疎開児童は当時、小学校高学年くらい。今は80代、90代になられている。空襲を潜り抜け、親元を離れて物もなく、良い思い出ばかりではないと思うが、歌の時間は楽しいひとときだったのでは」と思いを巡らせる。
「昔の学校にあったオルガンの多くは捨てられてしまった。これは、船橋の歴史の一ページ、全国区の教科書に載らない資料。戦時下の政策や教育制度、当時の児童や先生のことなども掘り下げられたら」
同館は今月31日まで休館。4月以降は未定。新型コロナ感染が落ち着き次第、「音色を聞いてもらいたい」という。