文字と絵 指差し意思疎通
船橋市は、聴覚に障がいがある人や耳が聞こえづらい高齢者らの日常生活の不便さを解消しようと、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでの利用を想定した「コミュニケーションボード」を作成した。
画像=本人用の「МYコミュニケーションボード」。ほか事業者用がある
「レジ袋は必要ですか?」「レジ袋、エコバックを持っています」…。ボードには、袋やポイント利用の有無、商品を温めるか否かなど、買い物時によく交わされるやりとりが文字と絵で示されている。店員や本人が相手に伝えたい内容を指で差し示すことで視覚的な要素を増やし、「円滑なコミュニケーションにつながれば」と市障害福祉課。
聴覚障がいがある人の「困っている」との声を受け、事業者と本人向けの2種類を作成。いずれも市ホームページからダウンロードでき、各店舗が印刷してレジの横に置く、本人がスマホに画像を保存しておくといった使い方を想定し、今後の広がりに期待する。
聴覚障がいがある人のコミュニケーション手段として手話が広く知られるが、買い物や通院時など日常生活のあらゆる場面で聞こえる人が相手の場合、多くは口の形を読み取ることで話の意図をつかんでいるという。しかし、コロナ禍でマスク越しとなり、日常生活に支障が生じている。近年はレジ袋の有料化やポイント還元制度、キャッシュレス決済など買い物が複雑化しているのも一因で、問いかけられている内容が分からなくても、列の後ろで待つ人のことを考え、聞き直さずに首を縦か横に振り、意図せぬ展開に困惑している人もいるのが現状だ。
市聴覚障害者協会の三浦みどり会長は、指差し型のボード作成に対し「大変ありがたい。私たちだけでなく、高齢者や言語に障がいがある人々にとっても手段の一つになり得ると思う」と話す。ただ、「コミュニケーションボードが社会に広く周知されなければ、利用しやすいものにはなり得ず、日常生活の不便さは解消されない」とも。同協会では、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き次第、多くの店舗にボードの設置を働きかけていくつもりだ。
「障がいの有無に関わらず、全ての人々が生活しやすい社会、人に優しい街になってほしい」と三浦さんは話している。