船橋市、避難所に「間仕切り」導入
災害時の避難所での生活環境を整えようと、船橋市は6日、建築家の坂茂さん(63)が代表理事を務めるNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワークと「簡易間仕切りシステム等の供給に関する協定」を締結した。大規模な災害が起こった場合、市の要請に基づき、同団体が間仕切りシステムなどを提供、運搬する。同時に市は備蓄も進める。
画像=松戸徹市長に間仕切りシステムとベッドについて説明する坂さん㊧
プライバシー保護、衛生向上
災害の発生時、避難所生活で課題として挙げられるのが、プライバシー保護や衛生面の問題だ。そうした課題を解消し、被災者の住環境を支援しようと、坂さんらが開発したのが紙管と布を組み立てる間仕切りシステムと、「15秒で作れる」収納付きのベッドだ。
95年にルワンダ難民を支援しようと紙管のシェルターを提案し、同年の阪神淡路大震災後に団体を設立。11年の東日本大震災、16年の熊本地震の被災地などに提供し、避難所を利用した人からは、他人の視線や床のほこりから解放されて「やっと落ち着いて寝られる」といった声が聞かれたという。また、7月4日の九州南部豪雨では新型コロナウイルスの感染予防にも重宝された。
「プライバシーがないと、特に女性は避難所に移れず、車中泊後にエコノミークラス症候群で亡くなった人もいる」と坂さん。「人権上、最低限必要なもの」と話す。
間仕切りシステムは支柱が紙管、仕切りは布で作られ、軽い。「地震で揺れるが、倒れない」。広さは1ユニット2㍍四方を基本に人数によって調節でき、布を動かし隣のユニットと交流もできる。被災した人自身が組み立てられ、その後、移った仮設住宅で門松やのれんに作り替えた人もおり、生活再建に力を貸す。
同NPOがこれまで協定を結んだ自治体は40以上。市はコロナ禍での災害に備え、飛沫感染防止に有効な同システムの導入を決め、同団体がこれを快諾した。坂さんは、過去の災害で避難所に提供を申し出た際、たびたび「前例がない」と断られた経験から、災害が起こる前の協定締結の必要性を感じている。仕切りのない部屋の床に布団を敷く従来の避難所は減り、「これが避難所の標準になりつつある」という。
県内では市川市に続いて2例目。松戸徹市長は「他の自治体にもメリットを発信し、防災力を高めたい」と話した。