水草減少 気候変動の影響

国内の湖沼に自生する水草の種類が急速に減少している。主な要因として周辺の土地利用や水質悪化などが挙げられるが、加えて気温や降水量などの気象条件の影響が大きいことを、東邦大理学部客員教授の西廣淳さん(48)らの研究チームが明らかにした。

画像=着目した湖沼の一つ、印旛沼。印旛沼や手賀沼など県内の水草の減少も著しい(国立環境研究所提供)

国内にはおよそ200種の水草が生育しているが、4分の1の種で絶滅のおそれが指摘されている。「それ自体が生物多様性の構成要素であるとともに、生き物の生息場の形成を通じた漁業などの人間活動にも大きな役割を果たしている」と西廣さん。ウナギは人にとって「大事な資源」だが、ウナギのエサとなるエビは水草と関係が深い。今回の調査では、茎も葉も水中にある「沈水植物」の減少が顕著だったが、「私たちの目にとまらずとも生活と無関係ではない」と警鐘を鳴らす。

東邦大客員教授ら、120年をデータ解析
研究は、国立環境研究所・気候変動適応センター室長でもある西廣さんと、同センター特別研究員のキム・ジユンさん(34)が、同部生命圏環境科学科に所属していた17年に着手。1900年以降の国内248湖沼に自生する58種の水草の分布と同時期の気象データなどを照合し、水草の種類の変化などを探った。その結果、種ごとの変化要因の14%が、気温上昇や降水パターンの変化によるものだった。

「長期的な変化のデータが不足していた」ため、気候変動が水草に与える影響についてはほとんど研究されていなかった。「水草の保全を考えるとき、水質や外来種の問題にばかり目が向きがちだが、複数要因の一つとして気候変動の影響もあり、それは予想よりも大きかった」と西廣さん。日本の年平均気温は、100年あたり1・15度の割合で上昇しており、「気候変動の進行を食い止めることが、湖の生態系を守る上でも重要」と指摘する。

世界では、新型コロナウイルス後の経済回復について気候変動対策に沿った議論が進み、生物多様性にも注目が集まるが、「日本はコロナ前に戻ろうという風潮が強い。これを機に見直すべきことがある」。