県内唯一のプロ楽団 苦境
宣言解除後も公演再開できず
県内唯一のプロオーケストラ「(財)千葉交響楽団」。新型コロナウイルスの影響で、2月末から演奏会の中止・延期が続いており、緊急事態宣言解除後も活動再開に至っていない。創立35年の歴史を持ち、千葉の文化的シンボルとして活動を続けてきた同楽団。現在、財政難のためホームページで寄付金を募っている。
「楽団も楽団員も大変苦しい状況。おらが街のオーケストラとして存続し、音楽のすばらしさを未来に伝えていくために、皆さまのご支援がどうしても必要」と同楽団事務局は呼び掛ける。
同楽団は、小中学校をはじめとした音楽鑑賞教室や訪問演奏など、年間約150回のコンサートを行っているが、今年は2月~7月に予定していた30以上の活動を休止。演奏会の事業収益や、県などからの受託料収入が止まっている状態だ。
「文化的損失計り知れない」
習志野市在住の同団ホルン奏者、大森啓史さん(47=写真)は、「1日でも早い再開を待ち望んでいる。これが世界中のオーケストラプレーヤーの共通する願いでは」と話す。
大森さんは年間約100日を楽団の活動に充て、そのほかに個別レッスンや小編成アンサンブルなど、音楽で生計を立てる。楽団の収入は演奏回数に応じて変動するため、コロナ禍で減少。動画を用いたレッスンなど、自宅でできる活動を新たに始めた。
「当初は1カ月もすればステージに戻れるだろうと考えていたが、ここまで深刻とは」。次のステージは早くて8月の定期演奏会だが、「練習に自粛はない」と日々楽器を手に取る。
「音楽は不要不急と見なされがちだが、外出自粛中に音楽を耳にしなかった人はほとんどいないでしょう。生命を維持する上では必要ないかもしれないが、不要なものをやっているという気持ちは全くない」
大森さんが心配するのは音楽家を志す若手のことだ。「不測の事態が起こった時に見捨てられ、暮らしていけないと若手が思えば、将来的に私たちが被る文化的損失は計り知れないほど大きい」と危機感を募らせる。
「好きなことをやっているから自己責任、そんな意見も耳にする。その通りなのだが、音楽家に限らず、どの職業の人も仕事を誇れる世であることが自分たちを豊かにしてくれる。音楽を続けていきたい。活動が再開したら、音楽ができることへの感謝を届けたい」