医療的ケア児の預かり支援
医療技術の進歩で、多くの新生児の命が救えるようになった。その結果、日常的に人工呼吸器の装着やたん吸引、胃や腸に直接栄養を注入する経管栄養などを要する「医療的ケア児」がここ10年ほどで倍増している。
厚労省の推計では全国の医療的ケア児は1万8千人を超え、県内には533人(平成30年度)。各機関で医療的ケア児支援の取り組みを進めているが、自宅で休日や夜間も看護を続ける家族にかかる負担が大きいのが現状だ。
「第3の居場所」 家族の負担軽減
藤原3の「スマイルぷらす船橋」はそうした家族の負担軽減や子どもの社会生活を支えることを目的にした児童発達支援、放課後等デイサービスだ。市内で訪問看護・リハビリ事業を展開する「スマイルケアブリッジ」(印内町)が、医療的ケア児を持つ親らから「安心して子どもを預けたい」「家庭、保育・教育機関に続く第3の居場所を」との声を受け、昨年オープンした。
(写真)子どもたちとスタッフがともにゲームを楽しむ。社会生活が制限されがちな子どもたちの交流の場にもなっている
医療的ケア児の親らは仕事や生活を犠牲にしてでも「自分たちでやるしかないと思いがちだが、社会って、そういうところだろうか」と代表の菊池海希斗さん(39)。親と離れて子どもが過ごす保育や教育機関が不足しており、自宅でも「閉鎖的な空間で、長い時間、親子でいる。分離の場が必要だ」と思いを語る。
現在、3歳~18歳の医療的ケア児や重症心身障がい児28人が通い、数時間、親と離れ、機能訓練や運動をして過ごしている。スタッフは、児童発達支援管理責任者、理学療法士、保育士、看護師など。1日に預かれるのは5人までで、経営は厳しいが「困っている人がいるなら。休息の時間を提供したい」という。
「子どもの預かり先が増えれば、家族全員の選択肢が広がる。家族が望んでいるのは、眠ったり、働いたり、次の子を生んで育てたり、この街で普通に暮らしていくこと」。同社では18歳以上の生活介護事業の展開も視野に入れる。「この子たちが生きながらえることは希望で、親は自分が死んだ後のことも見通せて、初めて安心できるのではないか」