「人」イグ・ノーベル工学賞を受賞した千葉工大教授 松崎元さん

「人を笑わせつつ考えさせる研究」として世界から脚光を浴びたのは、人がつまみを回転させるときの指の使い方について、というもの。同大学院在学中の20数年前に取り組んだ研究がなぜいま注目を集めたのか、と戸惑いつつも「目のつけどころを評価していただけてうれしい」と受賞を喜ぶ。

研究のきっかけは水道の蛇口。「デザインが異なっていても、同じ大きさの物に対する人の無意識のアプローチが似ていることを面白いと感じた」。そこで直径が異なる円柱45本を用意し、32人の被験者につまんでもらった。それぞれの円柱をつまむ際に使う指の本数や位置を比較し、統計的に明らかにした。

これまでにも「人の無意識の動作」に沿った製品開発に関わってきた。例えば、睡眠時の体勢に着目したL字型に折ることができる枕。スーツケースを引くときに想定される複数傾きに合わせた取っ手など。「使う人は意識する必要はないが、作る側、設計する側は意識していかなければならない」とデザイナーとしての顔ものぞかせる。

今回の受賞が、さまざまな分野の「無意識の研究」に目が向けられるきっかけになることを望んでいる。