19年ぶりの交代、初の女性市長 芝田氏

7月18日の鎌ケ谷市長選挙で初当選した芝田裕美氏(59)。市長交代は19年ぶりで、初の女性市長でもある。課題が山積している市政にどのように取り組むのか、その手腕が問われている。芝田氏は8月3日に本紙の単独取材に応じ、抱負を語った。

画像=芝田裕美(しばたひろみ)…1961年12月1日、旧鎌ケ谷町生まれ。鎌ケ谷小、鎌ケ谷中、松戸南高、音響技術専門学院を卒業、会社員を経て、主婦として2児を育てる。2003年に鎌ケ谷市議選で初当選。5期務め、同市議会では初となる女性議長にも就任。清水聖士前市長の後継候補として21年7月の市長選に無所属で立候補し、3新人を下し初当選した。

■就任して2週間ほど。
改めて責任の重さを痛感している。市議会議員として5期、議員の立場から市政を見ていた。議員の仕事は議決をすることと、市民の声をつなぐことだが、(行政の長である市長として)中に入ると実際に職員が抱えている多くの事業があり、真摯に取り組んでいることも実感した。市の執行部と議会は別の立ち位置でも、「鎌ケ谷を良くしよう」という方向は同じだ。

■新型コロナウイルス対策について。
ワクチン接種を希望する人への11月中の接種完了を目指す。当然、国からのワクチン供給量が関わってくるが、最近は2週間の1クールあたり8~9箱、約1万回分が配分されている。ペースが守られることを前提に、着実に進めたい。接種体制は充実しているが、ワクチンの不足については市長会を通じて働き掛けていきたい。市に予約を任せていただける市民を対象とした「ワクチン予約サポート」は2日現在、1300人が利用している。
市民、事業者への支援は、地域振興券としてプレミアム付き商品券の発行を考えており、商工業者と協議している。
子育て世代への市独自の支援は、21年度の新生児に1人5万円を給付する「あふれるえがお出産給付金」、多子世帯への給食費、保育料の軽減措置を考えているほか、医療費助成を高校3年まで引き上げることに取り組む。
これらは予算を伴う。緊急を要し、スピーディーに行わなければならないので、9月の議会に提出する。

■市民の要望が多い道路の整備については。
(鎌ケ谷以西が未開通である)国道464号線北千葉道路の整備、市道の整備を促進したい。鎌ケ谷市域は国道、県道は船橋我孫子線(通称船取線)、木下街道などがあり、生活道路に一部の車が入り込み、市民生活への影響を及ぼしている。新京成電鉄の高架化は19年12月に完了し、渋滞の原因の一つだった踏切の除去はできたが、市内の通過交通の解消には至っていない。特に(途中で途切れている)464号線が船取線に向かってボトルネックになってしまっており、車が入り込む原因になっている。着実に進めていきたい。
五本松小の通学路で、狭いわりに交通量が多い市道49号は拡幅のため土地の買収を進めていく。くぬぎ山から西部小の市道1号線の整備も進めている。

■新鎌ケ谷駅西口の開発は。
西側地区を「広域交流拠点」にしたい。鉄道4線も交わっている。ゼロベースのことなので、専門的な意見を踏まえつつ、鎌ケ谷の活性化に資する形の利用を大前提に進めたい。駅前の立地で、広さは7080平方㍍。県企業局が持っている土地で、県も考えがおありだと思うが、活性化に資する活用を強く要望していきたい。

「チーム鎌ケ谷で力を結集」

■市の予算について。
どの自治体も福祉の費用に当たる民生費が増加し、コロナ禍により数%単位で市税収入が落ち込む中、優先順位はどのように。
優先するのは公約に掲げた3事業で、コロナ、子育て、北千葉道路。限られたパイの中での選択になる。06年度から、いろいろな指標を用いて客観的に判断行政評価制度を毎年度実施し、予算編成に活用している。それをもとに冷静に判断したい。現状で困っている方たちに対する政策、例えばワクチン接種などは当然優先するし、未来に向けての投資もしなければ鎌ケ谷を持続可能な街にしていくことができない。そのバランスを見つつ判断する。当然、行政改革は常々やっていかなければならないので継続する。
うちの場合は幸いなことに、新鎌西口、長期的にいえば北千葉道路など、ステップアップしていける要素が現実的に見えているので、実現につながる政策を。近隣自治体や県の皆さんと共に地域の発展に向けて協力を進めていきたい。

■環境については。
持続可能な開発目標「SDGs」は全ての政策のベースになるもので、そちらにも取り組んでいく。鎌ケ谷は開発していく地域、抑制していく地域がほぼ半分ずつで、ゆで卵の黄身と白身のように位置している。北千葉道路の整備でも、今ある緑を生かしつつ、産業の部分とバランスのとれた街づくりをやっていきたい。

■人権については。LGBTについてのパートナーシップ制度やファミリーシップ制度などの検討はするか。
人権は基本中の基本。ベースとして常に存在している。制度については、どのような影響が出るか把握しきれていないので、研究していきたい。当事者の方々が生きやすい方向の社会になっていくべきだろう。当事者の声なども聞きながら検討させていただきたい。

■地元の住民には「鎌ケ谷は近隣市に比べてマイナーだ」との認識がある。
鎌ケ谷市民は謙虚な方が多いので「うちの街は…」という話し方をするが、鎌ケ谷の街が好きなんだなとも感じられる。そういった人々の思いをつなげたい。市民のふるさと意識はどこよりも強いのではないかと私自身は考えている。
今後は流入促進を図るために、都心の皆さまを対象としたアンケート調査を行いたい。魅力発信は重要だ。

■鎌ケ谷の良さはどんなところにあると考えているか。
一番の魅力は「鎌ケ谷の市民」。同じような活動をしている人たちはだいたい顔見知り。人間は顔が見えていると活動しやすく連携が図れる。例えば自治会やボランティアの皆さんと思いを共有し、協力している。個人的にはそこが一番の良さ。
鎌ケ谷は21・08平方キ㌔㍍と小さいが、11万人が暮らしている。人と人のつながりがあり、電車も4線あり、船橋市にも柏市にも近い。恵まれた立地条件だ。近くに繁華街もあり、普段は閑静な住宅街で暮らせる、子育てもしやすい、コンパクトにまとまったいい街と自負している。

■最後に。政治とは、行政とは。
住民の幸せのために仕事をすることに変わりはない。今は市長として予算編成権があり、最終的な責任を取る立場で提案する立場だ。
一人の力は限られるが、組織の力は無限大だと思っている。市民の皆さんも、事業者も、議会も、職員も、みんながひとつの組織、「チーム鎌ケ谷」だと思っている。市長という政治家としては、力を結集していただけるように頑張っていきたい。
一貫して言ってきたのは、今を大切にしつつ、未来に希望の持てる鎌ケ谷を作ること。皆さんの思いを紡いでいきたいと考えている。