「子どもを育む街」行田公園で活動する鈴木康允さん

休日の午後、子どもたちのにぎやかな声が響く行田公園。その中心で一緒に遊びに興じるシニア男性がいる。船橋市在住の鈴木康允さん(80)は、廃材などで組み立てた自作のカート、バランスボール、おもちゃの刀などを毎週末、持ち込み、子どもたちに提供している。

画像=公園に来た子どもたちと遊ぶ鈴木さん。各校の「船っ子教室」などで出会った顔見知りは多い

「おお、来たね」「これやってく?」と、公園にやってくる子どもに気さくに声を掛ける。鈴木さんを目指して駆け寄ってくる子もいれば、警戒し距離をとる親子など、反応はさまざまだ。

遊びながら体力づくり
「遊びながら体力づくりになればと思って。一石二鳥でしょ。ボールを投げたり乗って跳ねたり追いかけたり、車で坂道を下りて戻る時に押したり持ち上げたり。体幹や筋肉が鍛えられるんだよ」

子どもの体力・運動能力低下が言われて久しい。「体力が落ちているとみんな言うんだけど、口ばかりで実行する人が少ないじゃない。それに今は遊びにくいよ。だからひ弱になっている。子どもは宝。このままだといけない」と、5年前に活動を始めた。

取材中、カートで遊んでいた子どもたちが向こう側に行ったままなかなか戻ってこない。「誰がひっぱるとか、あんたはズルいとか、もめてるんだよな」と鈴木さんは笑う。決められた枠組みの中でのコミュニケーションではなく、まったく知らない者同士の距離の詰め方を学ぶ機会にもなれば。

ある時、遊びの輪に入らず黙って見ていた女の子がいた。「やるの?」と声をかけると、女の子は遊びはじめた。「この子はそんなことしないよ」と思い込んでいた周囲の大人は驚いた。「ここでは年上の子がリードしてくれるし、道具もあるからね。口では言えないけど態度であらわそうとしている」

毎回、藤原の自宅から一人で大量の遊具を自転車に乗せて運んでいる。「自分の足の筋力トレーニングにもなっているよな。動けるうちは続けていきたい。お偉いさんや若い人、ほかの地区の人たちにも伝わるといいな」