松戸徹氏インタビュー 船橋市長2期目の展望  「まちの力を生かし切る覚悟」

6月18日の船橋市長選挙で再選を果たした松戸徹氏(62)。船橋は人口増が続き、4月に63万人を突破するなど活力がある一方、懸案も山積している。2期目を迎える松戸氏に、意気込みを聞いた。

■選挙戦の手ごたえはいかがでしたか
明らかに4年前とは違っていて、若い世代の人が声を掛けてくれたのがうれしかった。投票率が低かった(過去最低の28・10%)のは残念。もっと市政の情報を発信していく必要がある。

■1期目の自己評価は
公約は半分ぐらい形にできたか、着手できた。高齢化対策や賑わいづくりなど。行政の仕事の8割はベーシックなもので、点数をつけるのは市民だが、自分としてはある程度、目標値に近づけられたと思う。

■「地域包括ケアシステム」の現状を
さまざまな分野の人と協力し、在宅医療などトータルのシステム作りを進めている。認知症の初期集中支援チームを作り、市全域でサポートする仕組みができたのは大きな前進だ。「健康寿命日本一」を目指して、市民が講師を務めるシルバーリハビリ体操も始めた。7月からは居住支援の取り組みも始める。

■今回の公約、海老川上流地区の「メディカルタウン構想」について
1983年にできた市医療センターの老朽化が進んでいる。市の中央に位置する重要なエリアだが、耕作放棄地が増え、じわじわと建物や墓地ができはじめている。手をこまねいていて良い状況ではない。移転予定の医療センターを核に、医療と健康づくりと自然が調和した新しいコンセプトのまちを作りたい。孫の代にいいまちを残すことができれば。

■地権者との交渉は
今の状況のままではダメ、という共通認識はある。ご意見を十分に受け入れながら、行政としては方向性を提示し、合意を頂けるよう努力する。

■市民の要望が非常に多い交通渋滞の解消は
力を入れなければならないのは、動脈である国道、県道の拡幅。これまでもやってきたが、より重点的に国や県に要望していく。市道はメリハリをつけて必要性の高い所から広げていく。道路は時間が掛かるが、計画性を持って進めたい。

■ビッグデータを用いた渋滞解消策について
市だけでハード面を作るのは限界があるので 、民間企業と連携できれば。情報を収集して、何らかの形で具体化したい。

■公約の「美術館の設置」を詳しく
京成船橋駅周辺に新設したい。市所蔵のものに加え、美術館のネットワークを生かして企画展示をする。東京に近い船橋は、美術館を独自で建てるより市民が発表する場を、という発想だったが、高齢化が進んでいる。そろそろ作るべきでは、と。

■公共施設の新設や維持管理、統廃合などは
船橋は人口が増えており、施設のニーズが減っていない。人口分布によって実情が異なるので、地域性を踏まえながらやっていく。施設の再整備は市民サービスのあり方とセットにしないと不具合が生じてしまう。

■待機児童問題は
今までも工夫して、新規施設の誘致や保育士の確保を進めてきた。今後は私立幼稚園との連携を図っていく必要がある。預かり保育だけではなく、認定こども園の幼稚園型も推進する。

■幼児教育の無償化は
今後、ひとつのテーマになる。財源を見ながら制度設計していく。

■「主権者教育」は
いま8~9歳の小学3年生は、10年後には選挙権を得る。大人になる過程で社会に参加する意味や責任を学ぶ場を作ることが重要だ。

■改めて、市政とは
市民が安心して暮らすための土台を常に進化させ、新しい時代に合ったものへ変えること。加えて、船橋が本来持っている力を引き出し、前進するエネルギーに活用すること。まちの力を生かし切る覚悟でやっていく。

 

松戸徹(まつどとおる)…1954年11月9日、八千代市生まれ。薬園台高、東京理科大理学部卒。78年、船橋市役所に就職。副市長を経て2013年に市長初当選。趣味はジャズ鑑賞、写真撮影。