東京湾の青潮シンポジウム 持続可能な漁業を討論

東京湾の青潮について考える青潮シンポジウム(船橋市漁業協同組合主催)が先月22日、船橋市民文化ホール(本町2)で開かれた。研究者や漁協関係者らが青潮対策や船橋の漁業の未来について意見を述べ合い、150人が聞き入った。

画像=青潮対策について討論する漁協関係者ら

青潮は海底の酸素が少ない水の層(貧酸素水塊)が海面に上がってくることで発生し、酸素不足による魚介類の大量死を招く。東京湾では1980年頃から青潮による被害が増えており、85年に発生した翌年には船橋のアサリ漁に大きな被害が出た。近年、青潮の発生は減少傾向にあるものの、年に複数回発生しており、関係者を悩ませている。

三番瀬では江戸時代からアサリ漁が盛んだったが、18年以降船橋での漁獲はぼぼゼロとなっている。船橋の新しい味として注目を集めるホンビノス貝も21年に発生した大規模な青潮で被害を受けた。

基調講演した名城大学の鈴木輝明特任教授は、青潮同様の現象である三河湾(愛知県)の苦潮について説明。海底の環境を改善するために鉄を投入していることなどを紹介した。

横浜国立大の比嘉紘士准教授は「東京湾で発生する青潮を対象としたリモートセンシング・生態系モデリングに関する研究と今後の展望について」と題し講演。青潮など海の状態を観測するシステム構築の重要性を訴えた。

研究者の講演に続き行われたパネルディスカッションでは漁協関係者ら12人が今後の対策などについて意見を交わした。

砕石の効果、海底の変化に言及
アサリの復活を目指し、17年から細かい石を海底に投入する「砕石覆砂事業」に取り組んでいる。外敵から身を守るとともに、潮流に稚貝が流されるのを防ぐ効果が期待されている。漁師の滝口光淑さんは、「砕石でうまく成育できても青潮でダメになる。近年はその繰り返し」と報告した。

底引き漁師の滝口光春さんは、東京湾海底の泥化について言及。「ここ2、3年は甲殻類やゴカイなども見られなくなった。取れる魚の種類も変わってきていて、ここ1年気になるのは、スズキの赤ちゃんが極端に見えなくなったこと。小さな貝や甲殻類の減少に関係があるのかとも思う」と話した。

船橋市漁業協同組合の山崎則之組合長は、「このシンポジウムが船橋の漁業の未来を考えるきっかけになれば」と期待を込めた。