パリ五輪にかける思い 体操の谷川翔選手

2021年東京五輪。体操の男子団体で日本が銀メダルを獲得した。兄・航をはじめ切磋琢磨した仲間たちが表彰台に上がり歓喜する姿を自宅のテレビで見ていた。「今までは遠いものだと思っていた五輪を近くに感じた。自分も出たいと思った」

18年の全日本選手権、内村航平の11連覇を阻み史上最年少で優勝。19年、同大会連覇、世界選手権でも活躍した。東京五輪のエース候補に名を連ねたが、コロナの影響で大会が1年延期に。その冬に肩を負傷し、その後もけがに悩まされた。翌年の代表選考会では思うような演技ができず、幼い頃から抱いてきた「兄弟での五輪出場」の夢が涙とともにポロリとこぼれ落ちた。

「体操ってできてる時はすごい簡単だと思う。でも、できないとなんでこんなに難しいのかと思う」。一瞬の演技のために何年もやってきた。その一瞬で決める難しさもあるが、満足のいく演技ができた時の喜びは他では味わえない。「このためにやってきたんだ俺と感じる瞬間。だから体操はやめられない」と魅力を話す。

昨年11月の世界選手権で第一線に復帰したものの完全復活とはいかなかった。「自信を持って演技できなかった。技術的な面もあるが、気持ち的な部分かな」と唇をかんだ。

「確かに18年、19年はプレッシャーも無く、伸び伸びやれていた。でも、体は万全とまではいかないが、今のほうがさまざまな面で経験値的に上がっている感じがする。けがしたことで体操だけでなく、人生に活きることがたくさんあった」。今心掛けているのがけがの予防だ。「人間の体って体操するために作られてないでしょって思う動きが結構ある。それに耐えられる体作りと、できるだけ負荷をかけない上手なやり方を」と貪欲に取り組む。
 
パリ大会まであと1年半。日々細かい目標を定め一つ一つ積み上げている。仲間たちとの代表枠の争い、10代の若い世代の突き上げも感じている。「何としても代表入りするという強い気持ちを持って挑みたい。自分も入ってお兄ちゃんも一緒に行けたら最高」とパリを見据え、今年の世界選手権を目標に再スタートを切る。

谷川翔(たにがわかける) 
セントラルスポーツ所属。1999年生まれ、船橋市出身。兄・航の影響で小学1年から健伸スポーツクラブで体操を始めた。市船橋在学時に全日本ジュニア体操選手権の個人総合V。順天堂大に進学後、全日本個人総合選手権で史上最年少となる19歳2か月で優勝した。兄弟でのパリ五輪出場を目指す。(写真は順天堂大学さくらキャンパスにて撮影)