伝統と精神次世代に 古和釜の日本刀研ぎ師 松村さん

「先人が守り受け継いだ文化や技術を次の世代に引き継ぐことは義務」――。船橋市古和釜在住の松村壮太郎さん(42)は全国でも数少ない日本刀研ぎ師だ。美術館や神社、個人などから刀研ぎの依頼を受けるほか、催しでの実演や講義など日本刀の啓蒙にも力を入れている。

画像=日本刀の研磨をする松村さん

静岡県出身。祖父の代からの研ぎ師で、19歳の時、佐倉市在住の栁川清次氏のもとへ弟子入りした。独立を機に09年に船橋へ。

手入れを怠れば、すぐに鉄の塊と化してしまう刀。鎌倉時代などの銘品が数多く残っているのは「日本人が刀を大切にしてきた証」と松村さん。武器ではあるが、刃文の美しさから美術品としての価値も高い。それに加え神や家宝、また力の源として日本人の心を支えてきた「精神性」が他の刀剣にはない最大の特徴という。

仕事の肝は時代ごと、一振りごとに特徴の異なる刀を、刀鍛冶の思いをくみ取りながら研ぐこと。例えるなら「作曲家と演奏家のような関係」と話す。

現職の研ぎ師は100人弱で後継者不足は深刻だ。昔ながらの徒弟制が残り、技術、経験、感覚を習得するまでに10年を要する厳しい世界。一方で女性研ぎ師の活躍も見られるなど、時代にあった変化もある。「変えていいところは変えつつ、伝統の芯は守り後世へ」と現職の研ぎ師の使命を語る。