「人」伝統芸能の可能性を追求する変面俳優 王文強さん

中国衣装をまとい軽快な音楽に合わせて舞う。首を振った瞬間に仮面が一変し、別の表情に――。10月末にふなばしアンデルセン公園であった国際交流イベントで会場を沸かせた。「子どもから大人まで、人種や言葉を越えて楽しめる伝統芸能。それを通じて人と人がつながり、交流が深まれば」

変面は四川省の伝統劇「川劇」の演出技巧の一つで、その早業部分だけを切り取ったものが「変面ショー」として親しまれている。近年注目が集まっていることを喜びつつも、手品的なパフォーマンスとしてとらえられることに、「お面一つひとつに意味があり、人物の感情を描写するもの。劇中でこその技巧で正しく伝えていきたい」と話す。

安徽省で生まれ、12歳から中国伝統劇を学び舞台俳優として活動。14年に来日し、日中の伝統劇を比較研究した。国ごとに習慣や文化の違いがあるが、その土地を知ることでそれぞれの実情や良さが見えてくる。芸術文化には人が無意識に持つ「心の壁」を取り除き、つなげる力がある、と18年に「アジア芸術文化促進会」を立ち上げ、異文化交流などに尽力する。

今月20~22日、新たな試みとして現代劇の変面一人芝居に挑む。都会の夜をさまよう一人の仮面売り。面を取るべきか否か。自分の本当の顔はなにか――。現代人が抱える、孤独や葛藤を表現した作品。「伝統芸能を時代に融合させながら生かしたい。そのあり方が変化する中で認知されることが望ましい」。変面の原点に戻りつつ、新たな可能性を探求する。