「福祉のかたち」住民と高齢者をマッチング

日常のちょっとした用事を頼みたい高齢者と、それに有料で応える地域住民をつなぐサービスが広がっている。千葉市を拠点に高齢者向けサービスを提供する会社「ヘルパーリンク」は19年に設立。県内の高齢者らから毎月600件ほどの依頼がある。船橋市内の需要が増えていることから、先月、JR船橋駅近くの施設に新たに拠点を設けた。

画像=利用者をサポートする樋谷さん(写真左上、本人提供)

社長の樋谷祐希さん(31)は「船橋市全体の福祉は充実しており、介護サービスは強いが、保険適用外の部分は薄い。まだまだいろいろなニーズがある。船橋で年間1万件のサポートを目指したい」と話す。

依頼があれば、「サポーター」として登録している地域の主婦や学生らが高齢者宅に出向き、料理や掃除、庭の草むしり、病院への付き添い、趣味の話し相手など、介護保険制度外の生活支援サービスを行う。インターネットが使えない高齢者でも、ケアマネジャーなどを通して希望をくみ取り、適したサポーターとつなぐように工夫している。利用料金は1時間1500円から。

依頼内容は家事が多く、主婦は「即戦力」で、近所で働くことができるのが利点だ。コロナ禍でアルバイトが少ない状況にある学生も、高齢者宅で「若い人が来てくれたと喜ばれ、それがお金になる」など、双方にメリットがある。

樋谷さんは地域社会の希薄化が進む中、「昔ながらの人と人のつながりを大事にしながら、デジタルを導入して両立化させたい」と話す。数年前、栄養士としてフィリピンで介護人材の教育に携わる中、日本では在宅高齢者へのサービスが足りていないと感じたという。他方、フィリピンではアプリを用いたタクシーの利用など、個人間サービスが進んでいる状況を目の当たりにし、マッチングに関心を持ち、同社を立ち上げた。

帰省しづらい環境が続く中、離れて暮らす家族に利用者の日常のレポートを送るサービスや、災害対策の無料診断といった新事業も準備している。