「異彩探訪」包丁研ぎ評判の靴店 日の丸屋靴店

「日の丸屋靴店」は新京成高根木戸駅から徒歩4分のところにある。ダンスシューズなどを扱う老舗だが、長年地域の人たちに重宝されているのが同店の「包丁研ぎ」サービスだ。

画像=包丁を研ぐ岡田さん

店主の岡田三郎さん(86)によると、靴の材料となる皮を切るなど、包丁は靴作りには欠かせない道具。一足を完成させるまでに、何度も研ぐという。

「ついでに人の包丁も」と、30年前に一般家庭や調理師の包丁を研ぐサービスを始めた。

店の床にペタリと座り、粗さの違う3つの砥石に包丁を滑らせる。切れ味はジャカイモでチェックする。「靴屋がやっているんじゃ、どうせ切れないだろう」と半信半疑の客もいて、研いだ包丁を返す時に「手を切らないようにって言うんだけど、やっぱり切っちゃう」。

切れすぎるほど切れると評判になり、多いときには月100本ほどの依頼がある。「トマトが切れないと持ってきて、食事の支度が楽しみだわと言って帰っていく。半年に一度くらい持ってきてくれれば」

群馬県の農家に生まれ、手伝いで使う鎌を自分で磨いていた。終戦後、「靴作りの名人になりたい」と15歳で都内の靴店に奉公へ。家族は反対したが、半年もすれば戻ってくるだろうと、送り出してくれた。まもなく手先の器用さを親方に認められ、13年間修行した。その後、1963年に独立。「団地に住む4千余世帯の靴を自分が一手に引き受ける」。そんな思いで高根木戸に店を構えた。

新型コロナウイルスの影響で靴の売り場は縮小しているが、ダンスシューズや上履きなど地元のニーズを取りそろえ、修理は「一度直したら二度と具合が悪くならないよう直す」をモットーに信頼を得てきた。

体力維持のため、45年間ランニングを続けている。「無学だから体で奉仕すると、昔、家族と話したの。100歳まで生きるよ。死ぬときは仕事場で」。定休日には3駅離れた妻の墓まで走って花を持っていく。

包丁研ぎは1本700円。10時~19時。土曜定休。高根台6‐45‐7。駐車場なし。℡(465)6841