コロナ禍を「書き残す」ちば文倶楽部8冊目の年間誌発行

身近な出来事などを題材に文章の書き方を学ぶ「ちば文倶楽部」がこのほど、年間誌「せんよう(千葉)」を発行した。8冊目となる今号では、会員らのコロナ禍の思いや体験を書き残そうと渦中の日々が繊細につづられている。

画像=作品や文章について話す会員ら

「三年半、続けた遠距離介護は頓挫。(中略)『母が認知症になったらコロナのせいだ』と不安を募らせつつ、頻繁に電話して、宅配便で食材を送りました」(今澤道代「遠距離介護とこども園」)。

「印刷屋さんに会った。(中略)『長い間のご愛顧ありがとうございました』という看板貼紙、挨拶の葉書などの印刷の依頼が増えたそうだ」(山﨑蓉子「破壊と過信と」)

「コロナは私の生活を突然、壊した。それでも文章教室に通い、『日記を書くような気持で』の言葉に少し望みが湧いている」(阿部喜志子「雨の日に」)

習志野市在住の編集者、塚田一未さん(73)の呼び掛けで約10年前から活動する同会。「コロナを身近なところから書き残したかった」と塚田さん。スペイン風邪が流行した大正期の町医者の診療記録や12歳の少女の日記が、いま貴重な史料となっていることを例に、「歴史的な出来事に立ち会っている者たちの具体的な体験記。単なる報告書とは違う、本音だらけの文章を後世に伝えたい」と話す。

会員で船橋市在住の宮岡みすみさん(52)は、「私たちの書いたものが、どこまで関心を持って読まれるかは分からないが、庶民の生活や思いは書かなければ流されてしまう。人は良くも悪くも忘れっぽい、ですから。自分にとっても後年、読み返したとき、感情が立ち上がってくるものでしょう」。年間誌はA5判・260㌻。700円。℡090・2565・2919塚田さん