「人」小規模の寄席で可能性を模索する 桂伸衛門さん

先月末、津田沼界隈の「茶の間ねこのて」と称する民家で落語会を開いた。限定10人の客を前に古典の「青菜」などを披露し、場内は笑いに包まれた。

今年5月、真打に昇進したばかり。折悪しく、新型コロナウイルスの感染拡大で昇進披露の公演は延期に。その他の仕事も軒並みなくなり、あてもなく散歩をしたり、喫茶店で時間をつぶしたりした。

コロナ収束まで何年掛かるのか。以前のように大会場で観客が肩を寄せ合う公演は、もう厳しい可能性もある。そんな状況下で、「芸の研さんの場を。人と人がつながりを感じられる場を増やしたい」と10人の落語会を発案。習志野や船橋の市民団体から声が掛かり、地元で寄席を複数回開くことになった。小人数だからこそ伝わる息遣いで、落語の新たなかたちを模索している。

横浜市で生まれ、小学生の頃に津田沼へ。野球に熱中し、松涛ホークス(当時)や習志野五中で白球を追った。お笑いが好きで、ビートたけしに代表される昔の浅草の雰囲気に憧れた。落語に興味はなかったが、「芸人の世界に入れるのではないか」と考え、落語研究会がある大学のみを受験。落研の先輩が持っていたビデオで10代目金原亭馬生の芸を目にし、寄席の魅力を知った。大学を中退し、一念発起して春雨や雷蔵に弟子入り。10年間、地道に芸の腕を磨いき、16年に桂伸治門下となった。

真打となった今、本格派の若手と言われることもあるが、ジャンルを問わず「心揺さぶる作品」を届けたいと考えている。昇進披露興行は10月11日、新宿末廣亭でスタートする。