集団感染の対応 共有

船橋市が設置し、市内社会福祉法人が運営管理する障がい者福祉施設の北総育成園(東庄町)で発生した、新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)への対応を振り返る報告会が15日、市役所で開かれた。

画像=防護服の取り扱いについて解説する船橋市職員ら。脱衣時は感染リスクが高いため、2人一組で順番を指示し、安全に脱ぐことが必要という

船橋市職員が報告
同園ではコロナ禍初期の3月末に大規模集団感染が発生し、入所者や職員など関係者121人の陽性が確認され、2人が亡くなった。園内で介助や感染の管理に当たった市職員がその教訓を障がい者施設や高齢者施設のスタッフと共有することで、今後の備えに生かしてもらうことが狙い。40人の事業者らが参加し、松戸徹市長は「一施設ではなく市全体で協力し合う体制を作っていきたい」とあいさつした。

市幹部による概要説明では、「重症者は入院。軽症、無症状、濃厚接触者は施設で健康観察」とした決断について語られた。当時は陽性者は入院、濃厚接触者を自宅で健康観察することが主流だったが、知的障がいのある入所者など環境の変化に対応できない人が多かったことが理由という。園内を「レッドゾーン」「セミクリーンゾーン」「グリーンゾーン」に分け、視覚的に通行できないことを理解できるように大きなバリケードを設置するといった工夫を報告した。

船橋市は応援職員を派遣。第1弾として3月31日に現場へ向かった保健師の高山恵子さん(49)は「入ったときは混乱状態で、ゾーニングがされておらず、食事へのこだわりが強い利用者の情報が分からなくなっていた」と振り返った。

その後も交代で派遣し、延べ36人の職員が訪れた。4月に派遣された戸頃翔さん(28)は「男性介護士が一人しかおらず、疲れ切っていた。防護服を着ての長時間の介助は大変で、4時間動きっぱなしのこともあった」。石橋保則さん(37)は「今後、応援職員を受け入れる施設は利用者さんの性格など、負担にならない範囲でマニュアルを作り事前に情報を提供する必要があるのでは」と話した。

市の応援職員への感染はなかった。同園は5月中旬に関係者全員の陰性が確認され、6月4日に県が終息宣言を発表した。