失語症の人を支える 22人の「意思疎通支援者」誕生

  「大きな一歩、社会に戻るきっかけに」

脳卒中や頭部外傷などで言葉の能力が低下する失語症の人たちをサポートする「意思疎通支援者」が誕生した。
失語症は、脳の損傷によって起こり、県内に推計2万5千人いるとされる。話すことや聞いて理解すること、文字の読み書きも困難になる。入院中は、言語聴覚士らが援助するが、退院後に生活全般に支障が出る失語症者は多い。ニュースなどの情報が入らない、会社や選挙に行けない、自分の病気の治療について意見が言えないなど、社会から孤立しがちだが、これまで本人や家族の生活を支える仕組みはほぼなかった。
医療や福祉の従事者にも十分な理解が及んでおらず、「認知症と誤解されることもある。これからは失語症の方の願いを確認し、正しい援助をしなければならない」と、鎌ケ谷市在住で県言語聴覚士会の吉田浩滋さん(67)。「支援者の誕生は、大きな転換、大きな一歩。本人や家族が社会に再統合するきっかけを作りたい」と意気が揚がる。同会の宇野園子さん(64)は「孤立している失語症者が、社会での居場所を取り戻し、本来の力を発揮するためのステップになる」と喜ぶ。

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「ゆっくり話す」「答えやすい質問をする」「要点を漢字で書く」「地図やカレンダーを利用」といった技法で認識を共有します―。昨年秋、県内で行われた支援者の養成講座には船橋市民3人を含む22人が参加した。40時間をかけ、外出同行や身体介助などについても学んだ。
支援者となった船橋市の居宅ケアマネージャー、佐藤むつみさん(67)は「関わりを拒否していた人に、言葉がけでなく、紙に、漢字で自己紹介をしたら話ができた。拒んでいたというより、話の内容を理解していなかったのだ」と分かって驚いたという。「学んだことを同業者の間で共有したい」と話す。
支援者には日常生活だけでなく、災害時の情報伝達などの役割も期待される。一方で、失語症者の要請に応じて各自治体から派遣されることになるが、その制度が十分整っていないのが課題という。
養成講座は今年秋にも松戸市で開催される予定だ。