小さな命 救う輪広がる 猫の育成ボランティア

船橋市動物愛護指導センターと市民が協力し、小さな命を救う取り組みが進んでいる。
昨年度、同センターに収容された猫は189匹でその多くは子猫だった。ここ数年、収容数は減少傾向にあるものの、出産ラッシュの時期などには数十匹を収容することもある。成猫に比べ授乳や体調管理に手がかかるため、センターだけでは対応が難しい。
16年に始まった「育成ボランティア」はセンターが引き取った離乳前の子猫などを、一時的に市民が預かり世話をする事業。愛情をかけて育てることで、人に懐いて譲渡につながりやすいメリットもある。
当初数人だったボランティアは現在、17人の登録がある。生後数日から1カ月ほどの子猫をセンターから預かり、1~2カ月間、自宅で面倒を見る。今年度はこれまでに32匹がボランティアに託された。センターに戻された後、新しい飼い主を探すことになる。
ボランティアの一人、岡崎里美さん(51)は「助けたいという気持ちはセンター職員もボランティアも同じ。役割を分担すれば力が倍増する」と活動の意義を語る。多いときで1日8回のミルクやり、室温管理、世話代のやりくりなど大変なこともあるが、育てた猫が新しい飼い主にかわいがられている姿を見るのが喜びという。
預かっている期間は名前をつけるなど愛情を注ぐが、「(センターに戻す)別れの時はサッと身を引く」などの心得を岡崎さんは語る。以前は預かった猫がその後どうなったか、「センター職員に聞くことを躊躇していたが、現在はセンターとの信頼関係が築けてきた」という。
同センター職員は「ボランティアの存在は心強い。命に関わることなので、経済的や身体的に負担をかけることになるが、無理のない範囲でお願いしたい」と話す。ただ「手を尽くしても病気などで死んでしまう場合はある」。その際、当人が自分を責めないよう配慮をしている。
ボランティアの拡大で、動物保護意識の高まりも想定される。岡崎さんは近隣住民に活動について話すことで「動物を飼いたくなったとき、センターにいる子を引き取る人が増えたらよい」と期待する。
これまでボランティアが育てた猫は譲渡されるなどし、殺処分された事例はないという。